【主な登場人物】
丁稚の亀吉 田中のご隠居 医者の安藤さん 医院の書生
【事の成り行き】
上方落語には排泄に関する下品な話題を取り上げた噺が数多くあります。
演芸専門用語で「下ネタ」と言い「けんげしゃ茶屋」の糞(ばば)の旦那のエ
ピソードなどは、まだ格調の高い部類に属します。
「ちしゃ医者」のお医者さんは肥え桶抱えて駕籠に乗りますし、旅館で算
盤の上に糞尿を垂れ流す「勘定板」や、蛍踊りのフィニッシュに屁もろ共、
身もひり出す「色事根問」など、ちょっと思い浮かべるだけでも十やそこら
はすぐ出てくるというぐらい、ポピュラーな話題なのです。
どうして上方落語と下ネタは相性がいいのか？ その理由をここで考えて
みたい、と思いかけましたが、あまりにもハードルが高すぎて、わたしの手
には負えません。
そこで、それら解析は専門の落語研究者に譲ることにし、今回は軽めの下
ネタ噺をお一つ(2009/01/25)。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
お子達のお噂を少々申しあげます。
末町(すえちょう)へまいりますっちゅうとお子達がたくさん遊んでいられ
まするが、また達者なもんです。末町のお子達は「捨て育ち」て、もぉ捨て
ておりますので、どぉしても達者な。で、どぉしても弱いのは船場辺のお子
達。といぅのがやっぱり、丁重におかけあそばすもんでやっさかいな。
もしミナミあたりの末地へまいりまするっちゅうと、ぎょ〜さんな捨て育
ち子が、もぉ口もその代わり達者なんですエェ。ほぉらこんなんが船場辺あ
たり奉公さしてごらん、どっちが主人や、主人が丁稚や分からん。もぉ口か
ら先、生まれたもんでやっさかいな。
■これッ、亀吉、亀吉ッ●ほぉら、呼んだな？■そんなおかしなもの言ぃす
な「呼んだな」とは、呼びゃこそ聞こえたんじゃろ？●へぇ、聞こえたから
こそ出てきたんじゃろ？■なんかすねん、アホが。貴様みたいな使いにくい
丁稚あらへんがな●「使いにくい」て、こんだけ使われてまんねん。雑巾やっ
たらもぉとぉに減ってまんねん、わたい。
■そないなおかしげなもの言ぃすんねやない、柄(から)ばっかり大けなりく
さって●そんな無茶言ぅたらどんなりまへん、からばっかり大きなりまっさ
かい、終いに大人になるんでな、からばっかり小そなるんやったら、ロウソ
クに火ぃ点けてジ〜ッと見てなさると一番よぉ分かるわ。
■そんな小理屈を言ぅねやあらへん。後ろへ回って、少々と今日は按摩がし
てもらいたい●それがかなわんねん、わたいな。お宅へ奉公に来んのに証文
なかに「按摩」やみな書き入れておまへんわ。
■そんなエゲツナイもの言ぃすんねやあれへん、じきに堪忍する、ちょっと
だけ按摩しなされ●へぇ、そら「せぇ」ちゅうたらしますけど、わたいら大
きなって、家(うち)さして丁稚やら女衆(おなごし)置いたかて「夏扇げ」と
「按摩せぇ」だけは言ぅたろまいと思う。
■そない言ぅたら気がねでしてもらわれへんがな、ちょっとだけ按摩しなさ
い●ほなしますがな、そっち向きなはれそっちを、そっち向きなはれ■これ
これ、背中を突いてどぉすんねん●「突いてどぉする？」て、前から按摩が
できますかい、背中あてがいなはれ。
■コツコツ言ぅねやあらへん、早よしくされ●しくさります……、ホンマに
もぉ、わたいらこないして、肩揉んだりすること思うと、手伝い(てったい)
の又兵衛、恨んでやりまっせ■何でまた、あの大人しぃ手伝いの又兵衛を恨
んでやるのじゃ？
●恨まななりまへんやないか、わたしが上町の最上屋に奉公してたら、そこ
取り戻された。へで「今度、俺が世話するそこのうち、柔らかもん育ちや」
言ぅさかいお宅へ来たら、絹もんでも着せてもらうのんか知らん思たら、な
んの、食いもんの柔らこもんでやんねん、柔らかもんの当て違いや。朝がお
粥(おかい)で、昼がお粥で、晩がお粥「中堂、講堂、開山堂」て叡山（えぇ
ざん）に登ってるよぉで……
■そんなエゲツナイもの言ぃすんねやないがな●「もの言ぃすんねやないが
な」と、言われんねやったらちぃとは硬い飯食わしとくなはれ。ついぞや今
日まで、お宅へ来て硬いウンコ出たことおまへんねん。
■おいおい、汚いこと……●「汚いこと」て、言わな分かりまへんがな。手
水(ちょ〜ず)行たかてオイドがピィピィ、ピィピィ……、オイドの穴が笛の
音色しやがんねん。自転車へ乗んのもラッパ要らずや。
■そないなアホらしぃこと言ぅな●「言ぅな」て言われとない、言ぅていか
んねやったら硬い飯食わしとくなはれ。こないだも東京へ行く人おましたん
で、停車場まで人送っていったんだ。で、停車場の手水場借って、わたい跨
(また)げてグッと気張るなり「ピィ〜ッ」ちゅうたら汽車が発車しかけた。
■嘘付け、どこぞの世界にオイドの笛で汽車が動(いの)くやつあるかい、な
んかすねんアホ。黙って早よ按摩しくされ●しくさってまんねん、そんなこ
と言わいでもしくさってますけどな、ホンマに。
●こないだらご隠居はんなんだっせ、わて、輪替い(わがい)屋の友吉っとん
と走り合いしたら「お前はお腹に湯たんぽ持ってるか？」と、こんなん言ぃ
よるんです「そんなん、持ってへんで」ちゅうと「お前が走るっちゅうと、
腹ん中がタブタブいぅとぉる」て、わての腹、担桶(たご)みたいに言われて
まんねん。
■そんなエゲツナイもの言ぃするもんやない●「するもんやない」て、言わ
れんのが嫌やったらちぃとは硬い飯食わしとくなはれ……。あのぉ、分から
んこと尋んねんなりまへん、ご主人。お酒食べても、お粥食べても「事の道
理」はおんなじことでやすか？
■言ぅと可愛いこと言ぃくさんねん、こいつはなぁ……「酒は米の水」てな
こと言ぅねぇ、せやよって、お粥でもお酒でも「事の道理」はおんなじこと
じゃ●さぁ、そぉでっしゃろ、何やかやいぅたかて、お粥食たかてひょろつ
くわ。
■あぁ〜、あれ言おと思てあんなんぬかしたな、黙ってしくされ●ハッハッ
ハッ、スコッチは怒った？■な、何が「スコッチ」や●けどいっぺんは硬い
ウンコしぃたいと思て……■もぉ、えぇかげんにしとけこれッ。
●えぇかげんに按摩さしてたら、どんなこと言ぅや分かりまへんで。こない
だ手水行たら硬いウンコが出たんで、わたい「不思議やなぁ、何も硬いご膳
食べたことないのに、なんでこない硬いウンコが出たんやろ？」と思てな、
手水場の中覗いて見たったんで、へぇ。硬いのん出たはずですわ、朝食た水
菜の塊り、そんなり出てくさんねん。
■もぉ、それよかエゲツノォよぉ言えんなぁ、黙ってしょ〜●あ〜、胸がスッ
とした■なんかすねん、アホが●こないだ、せやけど、あの十一屋のご隠居
お隠れになりましたなぁ、六十四ぃで■さぁさぁ、あのお方、えらい若死に
じゃ、わしゃ七十四ぃじゃがな。あの人、六十四で死ぬなんて、えらい若死
にじゃ。
●なんの若死になこと、あれが至当でやんねんでご隠居はん。人間わずか五
十年、五十年であんたよろしぃのに、それに六十四やったらあんで至当でや
んがな。あんたら七十四ぃやったら、だいたい生きすぎてなはんねや、いつ
死になはんねん？
■これッ「いつ死になはんね？」やて、そんなこと言ぅもんやない。お迎え
が来にゃ死ねりゃせん●そら、お迎えを待ってなはるさかい埒(らち)明けへ
んねや、こっちから突っかけなはったらどぉでやす、突っかけなはったら？
■何が突っかけんねん？●突っかけなはれ、そこへ地獄へ電報打て電報「ペ
スト流行る、すぐ迎えに来い」と■そんなアホなこと言ぅねやない、地獄へ
電報打つねやったら、もぉ自動車乗って極楽へ突っかけて行くわ。
●うわぁ〜ッ、えらい言ぃよるわ。あんた突っかけて行ったかて、極楽の入
口は入れるかい■何で極楽の入口が入れんのじゃ？●あんた行ったら「満員」
の札貼っとるぞ■もぉ、そんなアホなこと言ぅもんやあれへん、黙ってしく
され。
●黙ってしくさってまんねや、アホらしなってきた。ちぃと今度は頭いきま
ひょか？■いや、そんなことできゃ〜せん●できます、できます、頭でもな
んでも。もぉあんたのっけは下手でしたけど、段々上手なってもぉたんで。
●ジッとしときなはれや、頭いきまっせ、よろしまっか、よろしぃな、ジッ
と頭しときなはれや……（トントンッ、トントンッ）うまいことやるよぉな
りましたやろ、どぉですこれ？（トントンッ、トントンッ）
■ホンに、ホンに、えらいこぉうまいことやるよぉになりくさった●なりく
さりまへぇでか、毎日按摩さされて、しまいに上手になりくさってもぉたん
だ、あほらしもない。
●そんなもん、こんなもんばっかり勉強してたら、わたい去(い)んでお母ん
やお父っつぁんに言ぃ訳がおまへんがな「向こぉ行て、字ぃや算盤勉強した
か？」「いいや、按摩勉強した」て、嫌やでわたいそんなこと。
●わてらホンマにいんでお母んやお父っつぁんに、そら言ぃ訳おまへん。按
摩勉強して按摩ばっかり上手になったてなこと、いんでお母んやお父っつぁ
んに言ぅてみなはれ「あぁ、メクラになる追従(ついそぉ)かいなぁ」と思て、
親嫌がりまっせ。
■そんなアホなこと言ぅねやない●「言ぅねやない」て、そぉでやんがな、
言われんのがいかんねやったらえぇ加減に按摩堪忍して欲しぃわ、あほらし
もないホンマ……。耳の穴、ちょっといきまひょかご隠居はん、耳の穴を？
■そんなとこ、お前らにできやせん●できます、できます、耳の穴。ちょっ
とジッとしてなはれや、よろしぃか、耳の穴いきまっせ……、いよッとせぇ、
どぉでやす？■これこれ、グッと突っ込むのは痛いぞ●「痛い」もクソもあ
ろぉか、いよッと、どぉですこれ？
■あぁ〜、ホンにこらえぇ具合じゃ●えぇ具合でっしゃろ、ジッとしてなは
れや、さぁどぉじゃ、いよッと、これもっと入れたろ■これこれ、そぉグッ
と指入れたら耳が痛いじゃないか、グッと入れな。
●「入れな」もクソもあるか、ほぉらクソッタレ、こらッ、もの言ぅのん聞
こえてますか？ ご隠居はん、もの言ぅのん聞こえてますか？■はぁ〜あ？
●「はぁ〜あ」じゃ言ぅとぉる、もの言ぅのん聞こえてまへんかこらッ、禿
ちゃん、こら逆ボタル、こらッ■何じゃ、悪いこと言ぅてるな？
●うはッ、聞こえたないねな、こらホンマに、ちょっとジャミもらしたろか
いっぺん■なにを？●「何を」てホンマに、玄能(げんのぉ)でド頭(どたま)
ボ〜ンと撥ねとばしたろかホンマに、いっぺん拳骨でゴ〜ンとドタマいかし
とくなはれ？■あぁ、ええぇ具合。
●「えぇ具合」や言ぅとぉる、いっぺんいてこましたろ……、こらッ！■何
をすんねやこれ、人の頭殴ってどぉすんのんじゃ？●「一ついかしとくなは
れ」言ぅたら「えぇ具合」や言ぅてなはるさかい、こらいかないかん思て一
ついた。
■何しくさんねんアホ、主人の頭叩くてなこと、そんなことして罰(ばち)が
当たって手がいがむわ●あッ、ご主人、罰が当たったら手がいがみますか？
■「罰は目の前」ちゅうて、じきに罰ちゅな当たるもんじゃ。
●あッさよか、それ知らんもんでっさかいな、なるほどな……。ちょっとご
主人、後ろ向いて見てごらん、このとおりですわ。このとおり罰が当たって
手がいがんどります■それみされ、罰は目の前、手がいがむがな●こぉいが
んだら、按摩できん■アホ言え、なんかすねん、もっとやりくされ。
●もっとせんならんのか、うるさいなぁもぉ、アホらしなってきた。もぉえぇ
加減に助けてもらお思てんのに■「助けてもらお」やありゃせん、ちぃ〜と
黙ってしばらくのあいだしょ〜。貴様みたいにしゃべりどぉしにしゃべって
按摩してもろてたら、してもろてんねやらかえって肩凝るよぉなもんじゃ。
もぉしばらくのあいだじゃ。
●えぇ加減にもぉ堪忍して欲しぃわ、アホらしなってきた■これこれッ、毒
性(どくしょ)なやっちゃ、ほなもぉえぇもぉえぇ、按摩堪忍する●やれやれ、
按摩さえ堪忍してもろたらこんな結構なことないんで■按摩堪忍したらどぉ
するのじゃ？
●これから蔵の横手へ行って尿(ばり)回すわ■これッ、ならんぞアホ。どこ
の世界に奉公してて、蔵の横手でバリ回すやつがあるやろか。お使いに行か
んならん、お使いに●あッ、また使いに行くんですか？■そぉじゃ。
●かなわんなぁもぉ、朝から晩までダダベタに用するんですなぁ、小使い賃
使こたら減るもんやよって丁稚ば〜っかり使われてまんねん、もぉアホらし
なってけつかんねん。どこ行きまんねん？
■そないな、嫌らしげなもの言ぃすな「どこ行きまんねん？」て「ここ行き
まんねん」て、わしが言ぅまで聞かんかい●ほな、僕、元気やないで、とに
かく君やりたまえな。
■これッ、演劇やあれへんで、なんかしてんねんアホ。お医者はんまで行く
のじゃ●どこのお医者ん行くんで？■舟橋町のお医者はんへな、これこれ、
早よぉ行てくるのじゃ●舟橋町のどこのお医者はんへ行くんで？
■安藤さんちゅうお医者はんがおいでになる●あぁ、安藤はんとこ行くんで
すか？■さぁ、向こぉ行て、うちのお竹の薬をもろてくるのじゃ●安藤はん
とこ行て、お竹どんの薬？ あッ、女衆の薬やったら、ご主人、あんたもら
いに行きなはれ。
■これこれッ、何を言ぅんじゃ、そちがもらいに行ってやるんじゃ●女衆の
薬わたいがもらいに行くん？■おぉ、当たり前じゃ、武士は相身互いじゃな
いか。そちが悪かってみぃ、お竹がもらいに行てくれよるなぁ、けどお竹が
悪いのでそちがもらいに行く、これ武士相身互いじゃ。すぐ安藤はんとこ行
て、もぉてくんのじゃ。
●そらまぁ「もろてこい」言ぅならもろてきますけどな、けどこれ旦那はん
あんた行きなはれ■何でわしが行かんならん？●お竹どん、今度はあんた、
後(あと)へ直(なお)りはります。
■これ、そんな余計なこと言ぅことならん。いや、お竹はあぁいぅ正直でな、
真っ当正直やさかい、婆どんが死んだもんやさかい、後へさしてあれを直そ
と、女ご手がないのでそぉ思てんのじゃ。けしてよそへ行って言ぅことなら
んぞ、世間体裁、表向きは下女じゃ。
●はぁ、せやせや、裏向きは嫁はんやなぁ■もぉそんな余計な、これッ、要
らんこと……、そんな「裏向き」なんて言ぅことならん。早よ行て薬もろて
きなはれ●へぇ、ほな行てきます……、ハハッ、あぁ〜若いご隠居はんや、
行てもろてきたろ。
横町グルッと曲がりよるっちゅうと安藤さん。医者の家(うち)ちゅうのは
たいがい決まってやす、表は栗の戸前(こまえ)で切り目縁造り、庭は玄関用
にしてね、書生が表にもたれて一生懸命に本読んでます。表へ立ちよって、
●へッ、ごめんを……、ごめんを▲は〜い、どなたじゃな？●え〜、こんに
ちわ▲は〜い、どなたじゃな？●お留守ですか？▲何を言ぅとんねん、そこ
におるのはどなたじゃな？
●へぇ、あんたここのん？▲「あんたここのん」て、何じゃい？●あんた何
やねん？▲「あんた何や？」て、わいはここの書生じゃ●はぁはぁ、しょせ
きっとんか？▲「しょせきっとん」ちゅうやつがあるか、どっから来なさっ
た？
●へぇ、わて、あの、田中から参じました。あの〜、女衆っさんの薬もらい
にな▲あぁ、田中さんからな、はいはい●どぉぞひとつ、先生にそぉ言ぅて
もらいたい▲あぁよろしぃ、先生に伝えます、待ちなされや。
奥へ伝えますと、奥から先生出といなはる、手に煙草盆下げてな。先生と
なりますとなかなか咳でも一様に出ませんねん、下から込み上がってきよる。
向こぉのほぉで何じゃこぉ飛行機が通ったよぉな声出してな、
◆ぶぉ〜ほぉ〜ん、ぶぉ〜ぶぉ〜ッ……、あ〜、お前は？●うわぁ〜ッ、長
い咳しはった。しぶきが飛んで、ムシムシ暑いがな◆何を言ぅんじゃ、お薬
をもらいに来たのか？●へぇ、お薬をもらいに上がったんで、先生どぉぞひ
とつよろしゅ〜に。
◆しかし何かいな、女衆さんは変わったことはないかな？●へぇ、別に何も
変わったことおまへん、ただ「お薬だけもろてこい」言ぅてな◆あぁ、お薬
だけ……、へであの、何かいな、通じはどぉじゃな？●「通じ」て、なんで
やんねん？◆いや、お竹どんの裏向きはどぉじゃ？●あッ、裏向きは分かり
まへんけど……
【さげ】
●表向きは下女になってまんねん。
【プロパティ】
末町・末地＝街の中心から離れた所。場末。
船場、島之内、道頓堀＝東西の横堀川、北は土佐堀川、南を長堀川に囲ま
れた地域を船場と呼ぶ。同じく長堀川と道頓堀川で囲まれた地域が島
之内。道頓堀は道頓堀川を渡って南側の芝居町周辺。
ミナミ＝南地五街、花街。大阪では地名に南、北と出て来たらミナミ、キ
タの繁華街をさす。
ぎょ〜さん＝たくさん・はなはだ・たいへん。大言海には「希有さに」の
転とある。「仰々しい」のギョウか？「よぉけ→よぉ〜さん」たくさ
ん、の訛りかも？
なんかすねん＝なにを＋ぬかすねん。
ぬかす＝言う・ほざく。
柄(から)＝からだつき。下品な語としては、ドンガラ。
くさる＝するという意の下品な悪態口に用いる補助動詞。腐るであろう。
ヤガル・サラス・ケツカルなども同じ意。
どんならん＝仕方がない。どうにもならない。しょうがない。どうしよう
もない。どうにもならぬ。ドウモナラヌ→ドモナラン→ドムナラン→
ドンナラン。
かなん＝困惑する。適わない→適わん→かなん。
エゲツナイ＝濃厚な・辛辣な・酷烈不快な場合などに用いる形容詞。エグ
イ(喉を刺激するいがらい味)から出た語だろうという説もあるが、一
方にはイゲチナイという語もあり、イカツイ(厳しい)の転じたものか
と考えられる。イカツイ→イカツナイ→エカツナイ→エゲツナイ。ナ
イは幼気(いたいけ)ないなどと同じで、無いではなく甚だしいという
意味の接尾語。
女衆(おなごし)＝下女・はしため。雇われた順あるいは年齢順に、松竹梅
からとってお松どん、お竹どん、お梅どんと呼んだ。長じるとお松っ
つぁん、お竹はん、お梅はんとなる。決して呼び捨てにはしなかった。
手伝い(てったい)＝てつだい。手伝(てったい)職：土木の雑務を業とする
雇い人夫。上方では建築土木請負師およびその徒弟を総称して「普請
方」といい、これを大工・左官・石工・手伝に区別している。
柔らかもん＝絹物。
叡山(えいざん)＝比叡山延暦寺。
ついぞ＝未だかつて・ほとんど・めったに。
おいど＝尻。居所(いどころ)すなわち座る所の意で、それがイドと約まっ
たもの。
輪替い(わがい)＝輪替えの訛。輪は桶の輪で、たがのこと。桶や樽の修繕
を業とする。
担桶(たご)＝かつぎ桶。田籠の義という。
事の道理＝物事の本質。
水菜の塊り＝理屈は分かりませんが、水菜は消化が良くないように思いま
す。わたしも、水菜を食べすぎたあくる朝は消化しきれず軸を排出す
ることがあります。
そんなり＝〜なり：完了を継続した状態を示す接尾語。ずっとそのままで
ある。「したら、したなり」やったら、やりっぱなし。
至当＝きわめて当然で適当なさま。
埒(らち)が明く＝物事がはかどり決まりがつく。かたがつく。
埒(らち)＝囲い。特に馬場の周囲の柵。物事のきまった範囲。限界。
ペストの流行＝1894(明治27)年、香港で腺ペストが発生し感染拡大、中国、
台湾を経て日本でも、横浜、大阪(1899〜1900、1905〜1910)、神戸と
いった港町を中心に腺ペストが発生した。
のっけ＝初め。最初。初手。江戸弁で言う、てんづけ、つっかけ。
追従(ついそう)＝「〜になる追従」の用法は「〜になるために（神か仏か
に）気に入ってもらい、認めてもらえるよう（媚びへつらうような）
行いを重ねる」とでもすればよいのでしょうかね？
ジャミもらしたろ＝ジャミは「三味：口で三味線の真似をすることから嘘、
という俗語」からか？ いい加減なことを言ってやろう？
玄能(げんのう)＝玄翁(げんのう)和尚が殺生石を割るのに用いたという伝
説から、頭の両端にとがりのない、やや大ぶりの金づち。
こます＝〜する。物にするなどの意にいう下品な語。イテコマス：やって
しまう。暴力で抑えつけてしまう。強姦する。
罰(ばち)は目の前＝悪い事をすれば、たちまち罰が当たるということ。
毒性(どくしょう)＝意地わるな。残忍な。むごたらしい。ひどい。
尿(ばり)＝湯放(ゆまり)→ユバリ→バリ。小便。
小使い＝雑用請負人。用務員。
けつかる＝居る。する。の意の下品な悪態口に用いる語で、ケツカルだけ
でも「居やがる」の意であるが、さらに他の動詞に付いてその下品な
言い方になる。サラス・クサル・ヤガルなどと同じ意に使用するが、
この三つは動詞の連用形に付くのに対して、ケツカルだけはテに接続
する。してケツカル。言うてケツカル。など。ケッカルともいう。
後(あと)へ直(なお)る＝後添えになる。
戸前(こまえ)＝表戸。
切目縁(きりめえん)＝建物に対して直角に板を張った縁。木口を見せるた
め木口縁ともいう。
通り庭＝大阪で庭は土間のこと、木の植わっているのは前栽(せんざい)と
いう。
音源：(初代)桂春団治 ****/**/** ＳＰレコード
特別謝恩：Ｙさん、資料聴取させていただきありがとうございました。
Ｙさんのコメント＝現在は演じにくいのか、珍しい噺となって演じ手が少
なくなったし、放送でも取り上げにくいのか聞く機会がない。
【作成メモ】
●参 照 演 者：main＝(初代)桂春団治 sub＝＊
●main高座記録日：****/**/** ●音 源 名：ＳＰレコード
●ファイル公開日：2009/01/25 ●江戸落語相当：按摩小僧
●更 新 日：2024/09/15 ●リクエスト数：
●注 意 事 項：内容を削除、追加、改訂している部分があります。
記録日のmain演者によるさげを採用しました。
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