【創作上方噺】その01

そ  の  道


【主な登場人物】
 娘さん  町の衆  村の衆  若い衆  ご浪人  茶店の婆

【事の成り行き】  日本人は道が好きなんやそうです。匂いをかぐのに香道、茶を飲むのに茶 道、Coffee道、雀道、パチン道、……何でも道にしてしまいます。パソコン の方ではWin道なんちゅうのもあるそうです。

●嫌やわぁ、道間違ごぅたんかしらん。確かにこっちや言ぅててやったけど、 茶店の前にお婆さん出てはる、ちょっと尋ねてみよ。……すんません、つか ん事お聞きします。西畑村はまだ遠ぉます?▲はいはい、えぇとこで尋んね なさった。こっち出てみなされ。それ、ワシの指の先見てみなされ●爪が伸 びてます▲そやありゃせん、爪の先じゃ●垢が溜まってます▲……お日ぃさ んが沈んでいく方に川がきらきら光っておるじゃろが。

▲その道を下っていくとな、あそこに見える橋に出る、その橋渡って向こう の山の中ほど、ほら、大きな寺の屋根が見えるじゃろうが、あそこが西畑村 じゃで●日の暮れまでに着けますやろか?▲そうじゃなぁ、姐さんの足じゃ 無理かも知れんなぁ。

■ちょっとごめん、ねき(端)で聞かしてもろてましてんけど、西畑村へ行き なさるんで? そらちょうどえぇ、ワシが送って行きましょか。実、今日中 に届けんならん手紙おまして、一人では心細いなぁ、思とりましたんや▲そ うしてもらいなされ、堤燈お貸ししますでな●ほな、よろしゅう。

 山里の日の暮れはあっちゅう間です。堤燈突き出して、山道を二人と〜ぼ とぼ下っておりますと……

■姐さん、姐さん●へぇ、何だす■むふふふふ……●ひぇ〜〜、な、何をな さいます、ご無体な〜〜

 と、そこへ村の衆が現われまして。

◆おい、何ちゅ〜ことさらすんじゃ! お前、どこのもんや? この村のも んやありゃせんな。よし、これでもくらわんかい! ボコ、ドス、ボコ、ボ コ……■か、堪忍や。わ、悪かった、堪忍や〜〜っ

 送り狼っちゅう奴やったんですねぇ、■の男。

●はぁはぁ、はぁ……どなたさんか存じませんが、危ないところ、有難うご ざいます◆何ともありゃせんかいのう? ほん、物騒な。で、お前さんどこ 行きなさるんじゃ? ほぅ、ほぅ、西畑村。まだだいぶあるでのう、ワシが 送ってやろう●ほな、よろしゅう。

 とっぷりと暮れた田んぼの中、堤燈突き出して、一本道を二人と〜ぼとぼ 歩いておりますと……

◆娘さん、娘さん●へぇ、何だす◆むふふふふ……●ひぇ〜〜、な、何をな さいます、ご無体な〜〜

 と、そこへ若い衆が現われまして。

★おい、何ちゅ〜ことさらすんじゃ! お前、どこのもんや? この村のも んやありゃせんな。よし、これでもくらわんかい! ボコ、ドス、ボコ、ボ コ……◆か、堪忍や。わ、悪かった、堪忍や〜〜っ

 こいつも送り狼っちゅう奴やったんですねぇ、◆の男。

●はぁはぁ、はぁ……どなたさんか存じませんが、危ないところ、有難うご ざいます★何ともなかったかい? ほんと物騒な。で、姐さんどちらへ行き なさるんや? ふん、ふん、西畑村。まだだいぶあるからなぁ、オレが送っ てやろう●ほな、よろしゅう。

 やがて山手へとかかってまいります。月も見えん真っ暗な山道を堤燈突き 出して、二人と〜ぼとぼ登っておりますと……

★姐さん、姐さん●へぇ、何だす★むふふふふ……●ひぇ〜〜、な、何をな さいます、ご無体な〜〜

 と、そこへご浪人が現われまして。

◆おい、何ということをするのじゃ! おぬし、どこのものじゃ? この村 のものではあるまい。よし、これでもくらえ! ボコ、ドス、ボコ、ボコ… …★か、堪忍や。わ、悪かった、堪忍や〜〜っ

●はぁはぁ、はぁ……どなたさんか存じませんが、危ないところ、有難うご ざいます◆そちに要はない、とっととうせろ!!

【さげ】  というなりご浪人、若い衆の背後から……


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