桂米朝師匠の大業績に「米朝落語全集」全７巻(創元社刊)があります。恥
ずかしながら、私は未だに目を通したことがありません。
物理的ボリュームによる、時間、保管、金銭的な問題もさることながら、
本流大正統、大巨匠の解釈、講釈を聴いてしまうと、自分自身で考えられな
くなってしまう。というのは表向きで、実のところ、今まで自己流で解釈し
てきた「上方落語」の理解度に赤点を付けられるのが恐い、というのが理由
の最もたるものです。
そのうち、そのうち、と思いながらの今日なわけですが、気が付けば、恐
れ多くも師の「米朝落語全集」に収められている演題数に並ぼうとしていま
す。小便たんごも百荷＝肥桶のような汚いものでも整然とたくさん並べば壮
観。美しく見えんことも無い。数だけは……、だけでは……、まぁえぇか。
同じく米朝師匠に「米朝ばなし／上方落語地図」(講談社刊)がありまして、
こちらは昨98年夏に読ませていただきました。
我がホームページに同じコンセプトのもと「落語で散歩」というシリーズ
をアップしてることもあり興味深く拝見しましたところ、嬉しいですねぇ、
米朝師匠の目の方向と大して違わない方向を見ていることが分かりました。
いいましても、内容はプロとアマ、黒と白、玄人と素人。比較すべくもあ
りませんのです。ただ同じ方向を見ていたことに「上方落語」の解釈方法は
間違ってなかったと安心した次第です。
落語を聴いて文字に置き換える、ほんまオタクな作業やなぁ……、と、つ
い最近まで自ら特殊人間の仲間に入れたろかしらんと思いかけてたのですが、
ひょんな事から、これが金になることを確認しました。
広報紙や機関誌の組版で生活費を稼ぐのが私の本業でして、手元に届くの
は書き上げられた原稿です。ところが昨秋、カセットテープに採りっぱなし
の座談会生録音が届けられました。以前なら、即専門の業者に渡して書き起
こしてもらうところ……、イッチョやったろかい！
訓練というものは大したモンです。まるで本職のテープ速記者のようにス
ラスラ書き起こせます。苦もなく出来上がり、報酬３０分あたり２万円が転
がり込んで、こら金になりますねぇ。
で、貧乏性は考えるわけです……。今まで書き起こした「上方落語メモ」
１５０ファイル、１ファイル約３０分、２万円掛けるところの１５０は……、
３００万円、さ、三百、ま、ま、万円……、誰に請求したろ？
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